エール。

先日のこと。
お産の時には好きな曲を聴いてもいいよ、と言っているのですが、iPodでシドメドレーを持ってきた若い産婦がおりました。
夜中の12時からね、約8時間、ず~っとシド三昧。ライブ何本分ですかって感じです。

シド、というバンドは名前は知っていて、姿もまぁ知っていたんですけど、「なんだか演歌みたいなのを歌っているV系」というイメージがあって、スルーしていました。
でもね、いい曲がたくさんあったのですよ!

最初に耳を惹かれたのは、「エール」「微熱」「涙の温度」の3曲。というか、彼女が好きらしく、数曲おきにこの3曲が入ってくる(笑)
いや、いい歌詞ですよ。ファンに向けて歌われたら嬉しくて苦しくなるくらいの。
その後は「眩暈」「必要悪」「赤紙シャッフォー」などの早い曲。ちょっとお産には向いていないリズムなのですが、これもやっぱり入っていて…。
人が他にいなかったので、イヤホンもかわいそうなので、そのままオープンで流していまして、たまに覗きに来る先生も興味津々。

「なんか演歌が聞こえるよ?」とか、「このストーカーの曲怖いよ!」とか、仮眠室に帰ったのかと思ったら隅の方で歌詞に感化されて泣いていたり…(笑)
ええ、私も時々曲のほうに意識がいって体が動きそうになっていましたが、メインは産婆なので、ぐっとこらえて腰をさすっていました。
目の不自由な彼女はどんな人たちが歌い演奏しているのかわかりません。彼女なりのイメージはあるでしょうけれども。
それでもあいまに、「ここのベースがかっこいいの」「ここのギターで泣けるの」とつらい中でも話してくれる彼女に熱いファン魂を感じました。

立ち会う人もいなくて、一人で暗闇の中で未知の出産に向き合う彼女の抱える不安や怖さは、押しつぶされそうな大きさだったとおもいます。
それを支えて余りある力を音楽はもっているな、と改めて感じました。
あ、もちろん、この私(助産師)の存在も大きいと信じたいところですけど(笑)

一緒に聞いている間、聴覚の研ぎ澄まされた彼女が聞く音と、私の聞く音と葉違うような気がしていました。
私は情報の大部分を視覚に頼っているらしく、コンタクト片方落としたりして目がやられてしまうと、耳もいつもより聞こえにくいような、頭もいつもより働かないような、そんな感じを覚えます。
こんな私の聴覚が伝える情報量と彼女のそれは違うように思えてなりません。

きっとすごいんだろうな。
そんなこんなで無事に彼女はお産を終えて、可愛い男の子を抱きしめました。
彼女と赤ちゃんの頑張りと、シドに感謝。

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